リビングの大きめのソファーには、大和撫子が座っていた。
ソファーを後ろから行儀の悪い犬のようにまたいで座る。もちろん彼女の後ろに。
先客が居るのを気にもせず、むしろ居たからこそずかずかと。
コーヒーを飲みながら先客はホラーDVDをみていた。
ほんとに夢中だな・・・と、行儀の悪い犬は呆れ顔になった。
まぁ、彼女は新品のテレビに釘付けなのでそんなことは知るよしもないのだが。
包むように後ろから抱きしめる。
大和撫子は気にしない。なんでもないという風に、コーヒーカップに口付けた。
初めて会って鼻血を拭いていた頃を思い出せば、物凄い進歩だ。
うなじに顔をうずめて、まさしく犬のように匂いをかぐ。
母親にするように、おでこをぐりぐりと押し付けた。
小さい頃、叶わなかったことを。甘えることをしてみる。
彼女は少しの間動かなくなった。でもそれは本当に少しのこと。
なんでもないというように、再びテレビに熱中。
これが当たり前、といわれているようで、綺麗な犬は小さな幸福感に包まれた。
甘く、馨る。
白い肌におでこではなく、唇を落とす。
さすがに驚いたようで、コーヒーを零しかけたようだ。
静止の声が聞こえた。けれどもそれが耳に入っても、綺麗な声だなんて考えるぐらいで全く静止する気は起きなかった。
抱き寄せてこっちを向かせて、触れるだけの口付けを交わす。
抵抗をしないのも嬉しい。
唇を離す。顔をみると、少し切なそうに・気恥ずかしそうに眉をひそめて、頬を桃色に染めていた。
正面からしっかり抱きしめる。
ソファーのふわふわした感じが夢心地であった。
頬に耳たぶが触れる。
熱い。
初々しさに愛しさがこみ上げる。
今まで言ったことのないような愛の言葉を囁けば、
頬に触れるそれがもっともっと熱くなった気がした。
背中に細い手が回される。
お互いの体温を共有するように抱きしめあう。
至福の瞬間。
明日が来なくてもいいと思えるほどの、
それは幸せな二人の時間・・・。