漂ってくる、芳香。
くる、と腹が鳴き誘われた先に。

「何独り占めしてんだよ」
いーもん食ってんじゃねぇか、と目を細める。
「だめですっ、これはあたくしがあたくしの為だけに作ったんですからっっ」
おーぉー、毛ぇ逆立てた猫みてえ。
構わず手を伸ばして掬い取る。
制止の声を無視し「ん、やっぱうめぇ」
洋酒の効いたガナッシュクリームを舌で溶かし満足気に頷いた。
「あぁっ!!あたくしの!あたくしのチョコレートケーキなのにぃぃ!!」
もうこれ以上一欠片でも渡すものかと唸る頬に指の腹に残ったクリームを乗せ、頬ごとぺろりと舐めあげた。

…一瞬の硬直のあと、怪獣のような悲鳴を上げて蹲った頭に視線を落とし、髪をぐしゃぐしゃと乱してやる。
「自分だけうまいもん食おうとすっからだ、ばぁか」
「知りませんっ、とにかくもうっ!絶っっ対にあげませんからっ!!」
だから出ていけと涙目で怒鳴るが、
「いやだね、俺は腹減ってんだよ」だから何か食わせろ、と続けかけて飲み込む。
「じゃあさ、」

ケーキじゃなくておまえを食わせろ。

「なっ…!」凍り付いた隙を見計らって皿を奪う。
「ひっ、卑怯者ー!!!」
遠慮なく平らげ、キッチンを後にする。
「ごっそーさん」
詐欺師だの色魔だのケーキ返せ人でなしだのぎゃんぎゃん叫んでいるが気にせず退散した。
長居すると刺されかねない。
「あの、顔」思い出し、くつくつと笑いが込み上げる。
「冗談だっつの」…半分は。
ほっぺた、桃みてぇだったな。
不意に思い出し、火照るのはクリームに効かせた酒の所為だと言い聞かせ。
「あー、くそっ」

―――やっぱ両方食っときゃよかった。

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